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2006年11月03日 日本経済新聞
【薬効高める糖鎖 応用カギ 】
DNA(デオキシリボ核酸)やタンパク質とともに、生物の機能を支えている生体分子「
糖鎖」。その名前はあまり知られていないが、うまく利用すれば、薬の効果を高めるのに役立つ。
バイオ医薬研究の一大テーマだ。
「ライセンス供与先を含め、(
糖鎖を利用した)当社の薬効向上技術を使った『抗体医薬』は、世界で約三十品目が開発中だ」。協和発酵・医療戦略企画本部長の立花和義執行役員は、自社技術の影響力を強調する。
抗体医薬は免疫の働きを応用したもので、抗癌剤や関節リウマチ薬など様々な種類がある。日米で約二百品目が開発されており、協和発酵関連が実に二割弱を占める。
同社の技術では、抗体医薬にある
糖鎖の一部を除いた「スーパー抗体」を作ることができる。これを免疫細胞に作用させると、免疫細胞の攻撃力が百倍に強まる。着目する起業は多く、米国の抗体医薬最大手ジェネンテックなど六社に対し技術供与した。
「効果を調べたいので是非サンプルを」。北海道大学の西村紳一郎教授の下には現在も問い合わせが絶えない。
西村教授は二年前に開かれた
糖鎖研究最大の国際会議の招待講演で、糖尿病治療のために塩野義製薬と共同開発した「スーパーインスリン」を発表。インスリンに
糖鎖を付けることで、血中にインスリンが長時間とどまり、血糖値を長い時間制御することができたという内容だった。
一日三回の注射が一回で済む可能性があり、患者の肉体的な負担を軽減できると期待される。「二-三年には臨床試験をスタートしたい」(西村教授)という。
塩野義の創薬
研究所長の近藤裕郷執行役員は「インスリンは一つの
応用例。他のバイオ医薬品に
応用することを検討している」と説明する。北大に共同
研究施設を設け、〇八年にも
研究を本格化させる考えだ。
国内の糖鎖研究は長い歴史がある。糖鎖は日本が優位に立つバイオ分野といわれてきた。
例えば、
糖鎖を合成する酵素の遺伝子の七割は日本人研究者が突き止めるなど、世界をリードしてきた。協和発酵や北大の
研究も、
糖鎖研究に注力してきた日本ならではの成果といえる。だが「世界を
応用した
糖鎖医薬で日本が優位にあるのはごく一部」と北大の西村教授は釘を刺す。同教授によると、用途まで含めた物質特許は欧米がほとんど押さえている。
日本の論文発表は多いものの、応用となると出遅れ感が目立つ。
キリンビールは、貧血治療薬の効果持続時間を
糖鎖技術で三倍に高めた次世代製剤を来年にも国内発売するが、その実用化には米アムジェンの技術が欠かせなかった。抗体医薬の効果向上に関しても様々な手法があり、協和発酵の独自技術がどこまで優位性を発揮できるか不透明だ。
北大と日立ハイテクノロジーズが二月に開発した世界初の
糖鎖自動合成装置など、
糖鎖の工業
応用に不可欠な技術は一部で育ってきた。こうした技術を活用し、
いかに優れた医薬品を開発できるか。糖鎖の応用研究で日本が主役の座を確保できるかどうか、正念場を迎えている。
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糖鎖
ブドウ糖など様々な糖が鎖のように連なっている分子で、たんぱく質や脂質と一緒に細胞表面に張り出している。細胞が正常に働く上で、重要な役割を担っている。血液の「ABO型」も、赤血球の表面にある
糖鎖の構造の違いから分類されている。
糖鎖の複雑な構造やその働きを解明する
研究が盛んになっている。
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