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たんぱく創薬で最先端

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がん治療法 共同研究  がんや感染症に関与

2004年11月11日 日本経済新聞

【「たんぱく創薬」で最先端】
-北海道大学大学院教授西村紳一郎氏-

糖鎖の機能・構造、研究者として説明できないとくやしい」
「話の内容が非常に新鮮だった」

十月下旬に米国から帰国すると、コロンビア大の大学院生から日本語で電子メールが届いていた。
交流のある同大の教授に招かれ「糖鎖」をテーマに開いた特別講義への感想だった。
北海道大学大学院理学研究科教授の西村紳一郎はこの分野で最先端の研究者として知られ、海外を飛び回ることも多い。

糖鎖は人間の体内にある糖の一種。細胞の表面にあるたんぱく質と結合してウイルスなどを識別し、たんぱく質を変える働きもする。
医薬品開発につながる物質として注目されるが、機能や構造の本格的な解明はこれからだ。

「体内にある存在理由は何なのか。研究者として説明できないのはくやしい」

全遺伝情報(ゲノム)に基づいて作られるたんぱく質を解析する「ポストゲノム」の研究が活発になっているが、西村の研究は期待も込めて「次世代ポストゲノム」と呼ばれている。
生粋の学者だが、社交性に富み交渉力にもたけているとの声は多い。

二〇〇一年に糖鎖の自動合成装置を開発、装置と研究室の運営手腕に着目した塩野義製薬が西村と糖尿病の治療に使うインシュリンの共同研究に着手した。
たんぱく質でできているインシュリンに糖鎖を付け、血糖値抑制効果を持続させることを目指す。 糖鎖がたんぱく質を変える働きを応用した「たんぱく創薬」は世界でもまだ珍しい。

西村は一九九三年に北大最年少の三十三歳で教授に就任、二〇〇四年には国内化学分野で最も権威ある賞の一つである「高分子学会賞」を受賞した。
はたから見れば順風満帆な研究者人生に見えるが、本人からは「実は挫折ばかり」と意外な言葉が飛び出す。
父親が化学教師を務める北海道千歳高校に進学したが、歴史や政治経済に関心が高く、当初は東大や京大を目指した。
だが、現役合格は難しいと判断し、北大理学部に志望を変更。
四年生の時には成績が思わしくなく、学生に人気があった遺伝子や細胞などをテーマにする研究室に入れなかったという。
たまたま入った研究室で出会ったのが糖鎖だった。主要な研究テーマではなかったが「だれも注目していない分野にこそ、掘り出し物がある」と発想を転換。
糖鎖の機能を確かめるため、昔の論文を読み返しながら合成に取り組んだが、独学のため思うような結果が出なかった。
転機は大学院修了後に入った理化学研究所(埼玉県和光市)で訪れた。
実験の水準や機器は大学をはるかに上回り、見るもの、聞くものすべてが新鮮だった。
懸命に研究を続け、手作業でようやく糖鎖の合成に成功。
そのノウハウが自動合成装置の開発につながった。

研究で壁にぶつかることは多いが、決してあきらめない。
「難しい、分からないからといって、そのままにしておいては進歩がない。
大学院時代に苦労した経験があったからこそ、理研で解決すべきポイントが分かった」と振り返る。
自動合成装置を活用した「たんぱく創薬」とともに、今後、力を入れるのが糖鎖の構造解析だ。

糖鎖は病気の発症前後で構造が変化するため、予防診断に活用できる。

〇五年度末までに自動解析装置を開発し、米サン・マイクロシステムズなどと病状ごとに構造変化のデータベースを作成、診断や治療に役立てる。
実現すれば医療への貢献は大きい。
その時、「将来のノーベル賞候補」の呼び声は一段と現実味を帯びる。
=敬称略(菊池弘康)

□西村紳一郎氏プロフィール
にしむら・しんいちろう
1959年(昭34年)渡島管内木古内町生まれ。87年北大大学院理学研究科博士課程を修了、93年より現職。道内の産学官が連携して取り組むバイオ産業育成でも中核を成す研究者の1人だ。

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